車窓を飛ぶ風
 幾つかの駅を過ぎてはきたけれど 
   終着駅はいつまでたってもミステリー
 人生の流転が景色に同化して 
   時に車窓はふとした幸せ映し出す
 手もちぶたさにすったタバコの 
   灰を落とした吸殻入れに目を移す 
   そこに現実ひとつみつけた

 家並も田畑も丘も人さえも 
   生活と社会の吐息を感ずる間もなく 
 トンネルはくぐるたびに景色を変えて 
   まるで世代を隔てる扉のようだ
 やせたほほの輪郭と髭の剃り跡 
   なぞる手のひらに感じたぬくもり 
   それは現実そのものだから

 ほおづえついて一人旅 
 列車がゆれた 汽笛が鳴った 
 風の香りが窓の外  
 あれこれと想いめぐらすひとときに

 記憶の影の出入りは激しく 
 過去と未来の一瞬の交錯になる 
 棚網の上 ボストンバックにつめ込んだ
 それは現実のわだかまり 
 それは現実のしがらみ